小豆島に行こう、と思ったのだった

 小豆島に行こう、と思ったのだった。小豆島にはナカダさんがいる。シオデさんもいる。行こう。今ならいける。

 前日。ありがたい強引さで岡山へ呼ばれる。こんな日はどこまでいっても強引で、気づけば自分もそのペースにはまっていた。出かけるゆうてるシマから家の鍵を借りる。泊まるとこできた。忙しいゆうてるヨコタさんを昼メシに誘う。強引。ヤマモトさんは電話鳴ってるのに出ない。「わたし今トリイさんと話してるんで」ってお仕事中でしょうあなた。走るサクライさんを呼び止め同時にナカガワさん呼び出す。強引。強引の源、オグラさんの店は強引のるつぼだった。「飲みに行きましょうこのあともう一軒。ね。」と悪いお姉さん3人に連れて行かれたバー。1月からどうするんですか、となんども聞かれる。もごもごとしか話せない自分。なにもないから話せないのか、恥ずかしがってるだけなのか。もう自分でもわからん。気づいたら深夜2時。明日6時に起きたらなんとかなるなあ。布団に入って気絶。3時。

 6時45分起床。20分後の電車にのったら2本目のフェリーに乗れる。駅までは徒歩20分。でもぜったいシャワーを浴びた方がいい。いろんなことが頭を交錯して考えるのをやめる。20分後、さっぱりした二日酔いのおっさんは倉敷駅にいた。なんで間に合ったんやろ。フェリーで爆睡。

 小豆島は3回目かな?あまり変わってない。迷路のまちの本屋さんには前に一度来たことがある。閉まってたけど。だから、店構えや町並みはわかっている。ナカダさんとはTSUTAYAで一度会っている。ウェブの連載もなんだか気になってちらちらのぞいてる。いい文章を書く人。だからどんな人かはわかっている。じゃあ来なくていいじゃない。なにしに来たんだ。

 わかってるから来たのかもしれない。答え合わせ。わかってないから来たのかもしれない。どんな顔して店番してるんだろう、とか。階段を上りながらどうでもよくなってくる。いまここにいる、それでいいのかもしれない。

 明るい店内は試行錯誤の痕跡だらけだった。毎日にらめっこして並べ直して、でも元に戻ったりあんまり変わらなかったり。そんなことを勝手に想像しながら不自然なくらいくるくるまわる。くるくるまわらされている。

 ナカダさんはあいかわらずナカダさんだった。本屋さんもやっぱり本屋さんだった。でも1年後にはきっと違う店になっている。とか言いながらまた来る理由を探している。

 シオデさん登場。なにも変わってなさすぎて笑う。どこ行きたいですか、と聞かれて真っ先に「シオデさんち」と答えていた。あきれた顔、でもクルマは発車する。家、めっちゃよかった。カフェやら醤油の蔵やらくるり。もうフェリーの時間。高松へ。

 港はなんもかわってへんなあ。などと考えながらバスのチケット買う。不意にフジタさんのことが気になりだした。ジュンク堂。あんまり時間ない。行けんのか。会いたい。じゃあしょうがない。

 思ったより広い店で怯む。とおもったら目の前にフジタさんいた。いつもの笑顔。ぎこちない笑顔。きてよかった。ほんとによかった。

 ルヌガンガへ。ほんとに時間ない。なのに声もかけずに店内をくるくるまわってる。しなぞろえ。とにかくしなぞろえ。ナカムラさんと少しだけ話す。

 バスに乗って茶色いコリコリしたものをかじる。車内に響く音。眠れない。なにしに来たのか、という問いはもうなかった。会いに来た。それだけ。